低級脂肪酸低減微生物 Bacillus thuringiensis D45 株の選抜
尾上武1・下川智子2・日下芳友3・前田稔2・齋藤浩之3・浅田研一1
要約
養豚における悪臭の改善には豚舎で顕著に発生する低級脂肪酸の対策が重要である。そこで,保有する 515 株のバチルス属菌から優れた低級脂肪酸低減能力を有する微生物を選抜し,豚に給与した場合に豚房から発生する臭気の低減効果を検討した。低級脂肪酸添加培地に菌を接種し,各菌株の増殖能を判別して 1 次選抜したのち,1 次選抜株の低級脂肪酸の低減能を測定し,低級脂肪酸を完全に分解できる能力を示した微生物 Bacillus thuringiensis D45 株を最終選抜した。豚ぷん懸濁液に D45 株を接種して好気条件下で培養したところ,低級脂肪酸を低減できた。D45 株を飼料に混合して豚に給与しても健康状態に影響はなく,臓器への菌の浸潤は見られず,菌株の給与を停止して 1 週間経過した豚の直腸ふんからも菌は検出されなかった。採食量や増体重に影響を及ぼすことはなかった。飼料中の D45 株菌数を 105CFU/g(生重あたり,以下同)として肥育豚に給与すると豚房で発生する低級脂肪酸の濃度を60% 低減できた。飼料中の菌数を 106 CFU/g に増加しても低減効果は上がらず,菌数が 103CFU/g では低減効果が認められなかった。これらのことから,D45 株混合飼料の豚への給与は安全性に影響を及ぼすことなく豚房で発生する低級脂肪酸を低減でき,その際の飼料中の最適菌数は 105 CFU/g であると判断された。